現代の「保守」の劣化を示す議論の1つ。
自主防衛はコストがかかり過ぎる!という意見。
これって、「主権」をお金で売り渡して良いという発想に他ならない。
或いは、その自覚すら無いのか。
堕落、退廃の極み。
それで、よく靖国神社に平気でお参り出来るな、と呆れる。
どのツラ下げて英霊の前に出るのか。
ところで、自主防衛のコスト計算を実際に行ったのは、
防衛大学校安全保障学研究会の武田康裕氏と武藤功氏による
『コスト試算!日米同盟解体』(平成24年、毎日新聞社)。
同書では、約25兆円という金額を弾き出した。
この数字が独り歩きしている傾向がある。
これについては以前、高森ウィンドウズで批判した。
自主防衛=日米対立と短絡し、
勝手に破滅的なシナリオを描いた上で、膨大なコストを計上。
しかも、装備取得などの直接費用の支出は、
5年ないし20年ほどの長期のスパンで計算すべきなのに、
1年(!)の予算に詰め込むという無茶をしていた。
殆どトリックに近い。
防大の研究者がこれで大丈夫なのかと心配になる。
『エコノミストは信用できるか』などの著書で知られる
ジャーナリストの東谷暁氏が、同書のデータを元に不自然な操作を
除外して、再試算をされている
(『不毛な憲法論議』平成26年、朝日新書)。
こちらの方が参考になるので、紹介しよう。
「2兆4千4百11億円…対GDP比で0、5%弱の防衛費増加
ということでよい。
…新しい防衛計画を何年かで達成するのだとすれば、
自主防衛のための直接費用(先の2兆4千4百11億円)は
何年かにわけて分散することができる。
そのとき、場合によれば自主防衛に向けてのステップにかかる費用は
(日米同盟の費用、毎年1兆7千6百億円余りより)マイナス、
つまり、むしろ自主防衛に路線を変更したほうがずっと安くなって
しまう」と。
但し、日米同盟の費用も一気にゼロには出来ない。
だから、東谷氏の再試算も、更に微調整が必要だろう。
しかしその費用は漸減し、
やがて間違いなく自主防衛の方が「安く」なる。
だから…という話では、勿論ない。
それでも、対米依存に終止符を打っで自主防衛にシフトした方が、
コスト的にも有利、という事実は知っておいて良いはずだ。