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高森明勅
2017.8.6 22:00

自主防衛のコスト

現代の「保守」の劣化を示す議論の1つ。

自主防衛はコストがかかり過ぎる!という意見。

これって、「主権」をお金で売り渡して良いという発想に他ならない。
或いは、
その自覚すら無いのか。

堕落、退廃の極み。

それで、よく靖国神社に平気でお参り出来るな、と呆れる。

どのツラ下げて英霊の前に出るのか。

ところで、自主防衛のコスト計算を実際に行ったのは、
防衛大学校安全保障学研究会の武田康裕氏と武藤功氏による
コスト試算!日米同盟解体』(平成24年、毎日新聞社)。

同書では、約25兆円という金額を弾き出した。

この数字が独り歩きしている傾向がある。

これについては以前、高森ウィンドウズで批判した。

自主防衛=日米対立と短絡し、
勝手に破滅的なシナリオを描いた上で、膨大なコストを計上。

しかも、装備取得などの直接費用の支出は、
5年ないし20年ほどの長期のスパンで計算すべきなのに、
1年(
!)の予算に詰め込むという無茶をしていた。

殆どトリックに近い。

防大の研究者がこれで大丈夫なのかと心配になる。

エコノミストは信用できるか』などの著書で知られる
ジャーナリストの東谷暁氏が、
同書のデータを元に不自然な操作を
除外して
、再試算をされている
(『不毛な憲法論議』平成26年、
朝日新書)。

こちらの方が参考になるので、紹介しよう。

2兆4千4百11億円…対GDP比で0、5%弱の防衛費増加
ということでよい。
新しい防衛計画を何年かで達成するのだとすれば、
自主防衛のための直接費用(先の2兆4千4百11億円)
何年かにわけて分散することができる。
そのとき、
場合によれば自主防衛に向けてのステップにかかる費用は
日米同盟の費用、毎年1兆7千6百億円余りより)マイナス、
つまり、むしろ自主防衛に路線を変更したほうがずっと安くなって
しまう」
と。

但し、日米同盟の費用も一気にゼロには出来ない。

だから、東谷氏の再試算も、更に微調整が必要だろう。

しかしその費用は漸減し、
やがて間違いなく自主防衛の方が「
安く」なる。

だから…という話では、勿論ない。

それでも、対米依存に終止符を打っで自主防衛にシフトした方が、
コスト的にも有利、という事実は知っておいて良いはずだ。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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